
低線量肺がんCT検診
低線量肺がんCT検診を始めます
放射線科医長 杉浦 公彦
肺がんは全国で一年間に約6万5000人が死亡し、1981年以来、がん死亡の原因の第1位です。肺がんの多くは無症状であり、現在、肺がんを見つけるために人間ドックや集団検診として、胸部X線検査と喀痰検査とを組み合わせて行われています。胸部X線検査は末梢(肺野部)の、喀痰検査は中枢(肺門部)のがんの発見に有効とされており、前者では年1回の胸部X線による肺がん検診は肺がんによる死亡を30~50%減少させる効果も確認されています。しかし、肺がんのスクリーニング検査で用いられている胸部X線検査(間接撮影)は、直径が2~3cm以上の比較的大きながんの発見できますが、それ以下の大きさのがんや骨などの裏に隠れるがんは見つけにくい欠点があります。
胸部X線撮影で見つけにくい場所

■血管 23.3%
■肋軟骨化骨部 23.3%
■肋骨 20.0%
■心臓 18.4%
■横隔膜 3.3%
■肩甲骨 3.3%
■鎖骨 1.7%
■胸郭辺縁 6.7%
この方式で発見される肺がんの半数はすでに進行がんとなっているというデータもあります。現時点で治癒が可能な肺がんは進行の程度が低い小さな比較的早期の場合のみです。そのため、検診で発見されたがんのうち治る割合は胃癌が70%,子宮頚癌が90%以上であったのに対し、肺癌では30%程度であったという報告もあります。
なぜ、CT肺がん検診なのか
肺がんの発見率はCT導入により2倍以上上昇し、男性のみに絞れば3~7倍の発見率との報告もされています。また、早期がんの発見はCT導入前には約半数であったが、導入後は約80%に増えた。しかもI期の中でも3cm以下のIa期のがんが多く、平均の腫瘍径は1.6cmであったと報告もあります。これらは従来の喀痰検査や胸部X線検査では発見されなかった可能性の高い早期がんです。CT検診による肺がん死亡減少効果に関する大規模研究では、その成績の一部が報告され始めています。
CT肺がん検診の位置づけ
2006年に公表された厚生労働省がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班による“有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン”によれば、CT検診は「現時点では死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であり、対策型検診として実施することは勧められない」と評価されました。 しかし、諸報告によるCT検診発見肺がんの予後はきわめて良好で、日本では今後、ますます任意型検診としてのCT検診が急速に普及していくものと思われます。
CT肺がん検診の問題点
安全性として心配されるのは放射線被曝があります。ヘリカルCTの検診レベルの被曝線量は一検査あたりおおよそ35ミリシーベルト(mSv)です。これは胸部間接撮影検査の10回分にあたり、従来の肺がん検診のそれより多くなるのは事実です。しかし、胃癌検診で行われている造影検査と同じ程度であり、その効果を考えた場合、有用性が上回るものと考えています。 特にこの検診の場合は低線量CTとして行うため、通常のCT検査による診断よりも少ない被曝で検査を受けることができます。
被曝量の参考値(Sv≒Gyと考えてください)
低線量CT検診・・・約35mSv
間接X線胸部X線写真 約2mGy(皮膚)
一般撮影胸部X線写真 約0.23mGy(皮膚)
上部消化管透視(胃透視) 約20.0mGy(皮膚)
不利益を引き起こす被曝量の参考値
白血病になる危険性
造血機能のある骨髄に1000mSv当たった人が40年後に発病する確率は0.4%
原因となる骨髄の被爆量 CT全身撮影 4mGy 胸部X線撮影 0.05mGy
男性不妊(永久)になる線量 3500~6000mGy
女性不妊(永久)になる線量 2500~6000mGy
白内障になる線量 5000mGy
胎児の奇形発生起こす線量 100mGy
永久脱毛になる線量 7000mGy
身の回りの放射線被曝量の参考値
がんの放射線治療 30000~80000mGy(局所)
過去の急性被曝死亡事故 1100~40000mGy(全身)
1年間の自然放射線 約2.4mSv
航空機による宇宙線 ロサンゼルス~パリ(11時間)往復 約0.048mGy
ラジウム温泉(山梨県増富温泉)1日3回、30分間の入浴を、1週間続けると約0.027mSv
CT検診に求められる精度
CT検診に携わる諸医療職は、検診領域で一定レベル以上の技量・知識・経験を有していることが求められ、それを何らかの組織で認定証明し担保されている必要があると考えます。2007年3月に、日本医学放射線学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器外科学会、日本肺癌学会、日本CT検診学会、日本放射線技術学会の6学会からの委員で成るCT検診認定制度合同検討会が設置され、その「低線量肺がんCT検診認定制度」が開始されました。当院では放射線科医2名が認定読影医、診療放射線技師1名が認定技師です。認定医は鳥取県に5名、認定技師は3名のみであるため、近隣にはこのような施設は他にありません。(2010年11月現在)
CT検診で発見された早期がん
現在、画像診断はフィルムではなくモニター診断で行い、横断面だけでなく、正面と側面からの縦断面も撮影でき、読み落としを減らす方法をとっています
もしも、肺がんが発見された場合
検診では単に病期を発見するだけではなく、見つかった肺がんを正確に確定診断し、的確な治療するシステムが必要です。
確定診断には組織診断が必要となる場合がありますが、当院では呼吸器内科での気管支鏡、放射線科でのCTガイド下肺生検などの検査が可能です。 必要な場合には、鳥取大学病院に近接するため、PET検査など最新の画像診断を利用することが比較的容易にできます。
肺がんの治療としては通常、手術、放射線治療、化学療法が単独あるいは併用で行われています。当院では胸腔鏡手術も含めた外科治療を胸部血管外科、放射線治療を放射線科、化学療法を呼吸器内科が既に日常診療として行われています。したがって、検診から確定診断、治療までを一貫して行うことができると考えられます。
検診をお勧めするのは
50歳以上の人
喫煙係数600以上の人 (喫煙係数=タバコ1日の本数×年数)
せき、たん、胸痛が一ヶ月以上続く、血たんの出る人
重クロム酸、石綿、ピッチなどを取り扱う業務に従事する人
3親等以内にがん患者がある人
CT検査の頻度は数年ごとを一応の目安とします。
経費
他の任意検診と同様に自己負担による自由診療となります。
7000円(税別)
検診実施日
検診は毎週木曜日 午後4時~5時
予約方法
平日午前8時30分~午後5時までに病院代表電話(0859-33-7111)
検診担当宛に予約をお願いいたします。
なお、毎週木曜日に2名の予約となりますのでご希望に添えないことがございますがご了承ください。